重松清を読んで

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久しぶりに重松清を読んだ。

古い友人に会ったような心地よさを感じた。

高校時代や大学時代の友人に会うと、会えなかった時間が一足飛びに縮まって、あの頃に戻る

ような個人的なタイムマシン体験をする。

今回の重松清もそうだった。

何年かぶりに彼の作品に触れて、むさぼるように読んだあの頃と同じ気持ちになった。

重松清は、やっぱり重松清だった。

前置きは長くなったが、今回の手に取った作品は「君のともだち」

 

読み終えるたびに思うのは、「これこそが重松の最高傑作だ!」という事。

ナイフも、エイジもビタミンF、きよしこ、卒業、くちぶえ番長、その日の前に、などなどその他

数えきれない作品を読んだが。読み終えるたびに、最高傑作と感じた。

 

今回の「きみの友だち」も心の一番深いところを直接熱くして、涙が止まらなかった。

素晴らしい作品である。

大げさに言えばこの作品は、全国民、いや世界の人に読んでほしいと思う。

さすれば、世界中の人が優しくなれるのではないかと思う。今、ウクライナへのロシア侵攻の

ニュースが、世界を駆け巡っている。そんな中でたまたま手にとった作品であった。

 

物語は、脚の不自由な女の子と、重い病気を抱えた同級生の子の交流を中心に進んで行く。

我々は彼女たちと同じ時間を過ごしながら、怒り、悲しみ、時には涙して、時には無情の喜びを

感じて生きていく。

この物語を読んで、一番感じたことは、自らの欲とか、おごりに対する反省である。

キリスト教での人類の7つの罪の一つとして、「グリード、つまり貪欲がある」

つまり我々人類は、貪欲でかつすぐに驕り高ぶる本質があると言われている。

まわりを見渡しても、今の生活に不満を抱き自分が不幸であるがごとく考えて、すねたり愚痴ったり

する。そしてもっともっとと欲をかりたてて生きている。

そんな、小人の欲とか驕りをこの作品は、豪雨のごとく洗い流してくれる。

 

今年も3月11日がやってくる。

3年たった今年は、あの大震災が過去のものになったり、記憶が薄まっていないだろうか?

いつまでも東北の多くの方たちの心の傷は残り続ける。同時に、あの日多くの方が犠牲になり、

それをはねのけて生きている方も多くいる。

 我々が出来るのは、これからもこの日を忘れずに、震災に遭われた人たちに笑顔が戻るように

応援しつづける事である。そこには、我々自身の今の生活を不満に思ったり、欲を重ねる隙間は

ない。読みながらそんなことも思った。良い時に良い本に出会えた。

 

 重松清の名作に、「ビタミンF」がある。これは、今を一生懸命生きる人たちにエールを送る

ビタミン剤のような作品だった。

それと比較すると今回の「きみの友だち」、言い換えれば、ビタミンG!

驕りや欲深くなりがちな気持ちを、そっと抑えてくれるビタミン剤!

また、昔の友人の如く優しく見守ってくれながら、時には厳しいアドバイスをくれるそんな一冊である。

 またグリードがむくむくと大きくなりかけたら手に取る事にしよう。そんないつもそばに置いていたい

本である。

/治山

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はじめまして! 治山です。 今回から、ブログというものに挑戦します。 「をとこ(男)もす(る)という日記というものを、社長もして心みむとて、するなり。」というか、 「つれづれなるままに・・。」という心情でしょうか。

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このページは、haruyamaが2014年3月10日 13:26に書いたブログ記事です。

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