伯父さんの思い出

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先日、伯父が亡くなった。享年85歳であった。
6人兄弟の長男として、まさに治山家の精神的支柱であり「家長」にふさわしい人であった。

幼い頃の僕にとって伯父さんの印象は、英国の貴族であった。
(もちろん伯父さんは人種的には純粋の日本人です。(著者注)

背がすらっと高くて、がっしりしていた、目鼻立ちが高く、顔立ちもどこかしら外国人の血が混じって
いるような気がした。
すでにシルバーが混じった豊かな髪の毛。歌舞伎役者とも親しかったが、伯父さん自身、役者のような
顔立ちだった。

容姿だけではなく、文京区に住宅地に広々としたお屋敷を持ち、いつも黒塗りのプレジデントが
お迎えに来ていた。
お屋敷は東京のど真ん中にも関わらず庭には大きな池があり鯉が住み。滝もあった気がする。
高台に建つ家からは、天気がいいと富士山が見えた。

田舎者の僕ら兄弟にとって、伯父さんは都会での初めての体験を多くさせてももらった。
夏休みに遊びに行くと、旅館で出るような朝食には、いつも見たこともない白いものが並べていた。
そう、はんぺんを初めて食べたのも、伯父さんの家だった。今でも、はんぺんを見るたびに伯父さん
宅での朝食を思い出す。

当時日本一高いビルだった霞が関ビルにも連れて行ってもらった。それから浅草にも、なぜか
アメ横にも。そして江戸前の鰻、あんこうや明治から続く鶏のすき焼きも初めて食べた。
(今でも懐かしくて何年かに一度は行く。)なぜか食べ物の記憶が多い(苦笑)
熱海か箱根の別荘にもおじゃました。たぶん魚が非常に美味しかったので熱海だろう?)

そんな田舎者が驚くような経験の数々が、僕ら兄弟の東京への憧れとなったのは、ごく自然な
流れだった。その後、僕も姉も東京の大学へ進んだ。その点でも伯父さんは、僕らの人生の大きな
影響を及ぼしてくれた。

同時に伯父さんは、父にも非常に大きな影響を与えた。
父は事あるごとに、おじさんを自慢した。自分の宝物のように伯父さんを自慢した。
自分に比べると長兄は何から何まで優れていると。

実際、長兄は東京の一流大学に行き、その後銀行のオーナーに見込まれて、30代でその後継者
となった。その後、協会の全国の代表となり、昭和天皇の葬儀や浩宮皇太子殿下のご婚礼にも業界
代表として出席した。どの式の引き出物かは忘れたが、菊の御紋のついた金平糖を食べさせて
いただいた記憶がある。

もっとも、私の父は、次男として兄弟の学費を稼ぐために自分の大学進学を諦め、祖父の商売を
手伝い、兄弟全てを大学に行かせた。その後、父は事業を発展させて当社を作った。
父は、500億円の社長になっても伯父さんを自慢し、一方伯父さんは生前、父の犠牲で兄弟が
大学に行けたと事あるごとに言っていた。

お互い思いやり、自分を犠牲にしてでも家族に尽くす。これが、昭和の兄弟の姿であった。
いや昭和ではなく今でも通じると信じたい。

幸運にも父の代の兄弟全員が、経営者となり時には親族で意見が食い違った時、必ず間に立って
調整をしてくれたのも伯父さんであった。
鶴の一声で、伯父さんに言われると、父も兄弟も従わざるを得ず全てが解決した。
それ位、伯父さんの威厳は大きかった。

いつも本当に肝が据わった人で、伯父さんが焦ったり、感情的になったり姿を見たことがない。
それを象徴する思い出がある。
もう30年以上たつが、僕の母が亡くなった時、自分自身の悲しみを奥に追いやって、喪主の父を
支え、葬儀を取り仕切ってくれた。
親族代表の挨拶も、心情は決して見せずに落ち着いて、我々を気遣い威厳の中で格調高いもので
あった。この時の伯父さんの姿を僕は今でも鮮明に思い浮かべる。

晩年、身体を悪くされ、なかなかお会いする機会はなかった。今思えば、非常に残念でならない。
ぶれない、堂々とした方だった。
伯父さんを非常に誇りに思う。

今の僕は当時(僕が小学校の頃の)伯父さんの年齢を超えている。
人間の内から出るあの品格といったものは、遠く伯父さんの足元にも及ばない。
天国からこれからも見守ってほしいと思っています。

ご冥福をお祈りします。

合掌

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はじめまして! 治山です。 今回から、ブログというものに挑戦します。 「をとこ(男)もす(る)という日記というものを、社長もして心みむとて、するなり。」というか、 「つれづれなるままに・・。」という心情でしょうか。

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このページは、haruyamaが2014年9月 3日 10:17に書いたブログ記事です。

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